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浦和家庭裁判所 昭和54年(少ハ)1号 決定 1979年5月01日

少年 T・Z(昭三三・一一・一九生)

主文

在院者T・Zを昭和五五年二月一日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

一  本件申請の要旨は、「右在院者は、浦和家庭裁判所において、昭和五三年五月二日中等少年院送致の決定をうけ、同年五月九日新潟少年院に収容され、同少年学院において矯正教育を受け、昭和五四年五月一日をもつて収容期間満了となるものであるが、右在院者は、非行の原因となつた性格上の問題点(自信の欠如、自己中心的な合理化傾向等)矯正のためGGI(指導による集団相互作用)方式を中心とした問題解決リストによる自己改善目標の設定による教育を施されたが、これに対し、当初より問題解決に対する取組み姿勢を示さず、そのために昭和五三年七月二九日から同年八月一六日までの間調整処遇(個室処遇による特別日課)を受けたが、その後も依然改善されず、二級上の後半(昭和五三年六月一六日二級上に進級)に至りようやく問題解決への取組み姿勢がみられるようになり、昭和五三年九月一六日一級下に進級した。しかし、その後他在院者等とのかかわり合いが深まるにつれ、従前に比して一層の自信欠如の態度を示すようになり、自己の問題点から逃避したり、他人への配慮の欠如、自己の殻に閉じ込もろうとしたり感情的になりやすい等の傾向がたびたび表出して不安定な状況を呈し、その後再び問題解決に対し前向きの姿勢を示すようになり、昭和五四年二月一六日一級に仮進級したが、性格特性上の負因は根深く、波のある生活を繰り返し、矯正教育の効果も定着しているとは言い難い。従つて、右在院者を期間満了後も引き続き右少年院に収容して自己の問題点解決への取組みの指導を重点とした矯正教育を施す必要がある。また、右在院者の社会復期後の帰住環境についても、実父、実母とも行方不明であり、他に適当な保護者もなく、加えて予定職業についても現在調整中であつて、総じてその予後は不安定であつて、長期間付保護観察の要がある。そのため、期間満了後も引き続き収容を継続する必要があり、その期間は九か月間が相当であるから、本申請に及ぶものである。」というにある。

二  調査審判の結果並びに一件記録によると、右申請理由として掲げてある事実が認められる。そして、この認定事実によれば、右在院者の社会復帰のためにはその収容期間満了日である昭和五四年五月一日の経過後も引き続き収容を継続して矯正教育を実施する必要があるものというべくその期間についてみるに、一件記録によると、施設内処の期間として期間満了後三か月、仮退院後の保護観察の期間として六か月、合計期間満了後九か月が相当と認められる。よつて、少年院法一一条四項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 千川原則雄)

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